Vector graphicsとは何?

コンピュータで画像を編集するソフトウェアを使っていたり、大学などで画像処理の研究に携わっていると、「ベクタグラフィックス(Vector graphics)」または「ベクター画像」という言葉を見聞きする機会は多いです。これは画像データの表現形式の一つで、点や直線、曲線、多角形などといった解析幾何学的な図形の集まりで表現された画像のことを指します。ベクタグラフィックスと比較される表現形式は「ラスタグラフィックス(Raster Graphics)」で、こちらは点と色の濃淡でグラフィックを表現するものです。

中学校や高校の数学の授業では、図形を方程式をつかって表現することを学びます。ベクタグラフィックスはこれをコンピュータグラフィックスの分野に応用したもので、輪郭となる点の座標、点同士を結ぶ直線や曲線の方程式と引数、変形・回転・拡大縮小などの操作情報、線と面の色情報などを組み合わせてオブジェクトを表現します。我々がパソコンを操作しているときに見ているディスプレイ上の画像は、ベクタグラフィックスをOSの処理でラスタグラフィックスに変換(ラスタライズ)したものです。

ベクター画像のメリットは、計算処理によって描画を行うため元のデータ量を抑えられること、拡大・縮小・回転などの処理を施しても画質が損なわれないことなどが挙げられ、図面やイラストの表現に向いているとされています。一方で、写真でみられるような複雑な形や色をした図形の表現には不向きで、このような図形を扱う場合はラスタグラフィックスで表現されるのが一般的です。

また、グラフィックが複雑になるとラスタライズを実行するために必要な演算量が膨大になる点も、用意するハードウェアによってはデメリットとなります。ハードウェアの性能が不足していると、画像が不完全な形であらわされたり、最悪の場合まったく表現されない場合があるからです。かつてはベクター画像を完全に表現するためにはワークステーション並みの性能を持つ計算機が必要でしたが、ハードウェアの性能が大きく向上した現在では家庭用のパソコンでも十分に表現が可能になりました。ただし、文書作成やインターネットなどといった一般的な用途でパソコンやスマートフォンを使用している場合は、ベクター画像やラスター画像の違いを意識すること無く操作できますが、ゲーム制作や画像処理ソフトを使用する場合はハードウェアの性能を考慮しないと作業に支障がでる可能性があります。